衛星通信の特徴


広域性や同報性にメリット


現在、百数十もの静止衛星が赤道上空を回っています。衛星回線の低コスト化のためには、衛星の寿命を延ばし、回線容量を大きくする大型化が必要です。衛星通信は、広域性や同報性がメリットですが、伝送遅延やセキュリティに気を付けなければなりません。


現在、赤道上空3万6000kmの静止軌道上には、世界各国の通信衛星や放送衛生が百数十機以上も回っています(図1)。さらに、毎年新しい衛星が打ち上げられています。下手をすると衛星どうしの衝突が起こりかねません。2つ以上の衛星が同じ周波数帯を使う場合は、ある程度離して配置しないと電波の干渉が生じます。そこで、衛星の静止位置や使用周波数は、国際的に調整して決めています。
静止衛星は、静止位置からある程度以上ずれると、衛星のロケットを噴射して正しい位置に戻します。燃料を全部使い果たすと衛星の寿命が終わります。初期の衛星の寿命は1〜2年でしたが、最近の大型衛星は、燃料もたくさん積めるので10年以上の寿命となり、衛星通信の低コスト化に貢献しています。
わが国が利用中の国際通信衛星は、国際電話や国際テレビ中継に使われる「インテルサット(インド洋上と大平洋上)」、遠洋の船舶との通信に使われる「インマルサット」があります。
一方、国内通信衛星としては、それまでのCS-3(さくら3号)にかわって、95年8月と96年2月にNTTの「N-STAR」(2機)が打ち上げられ、離島通信、災害時の通信、移動通信などに使われています。民間の通信衛星として、宇宙通信の「スーパーバード」(2機)と日本サテライトシステムズの「JCSAT」(3機)があり、テレビ放送中継、CATV(ケーブル・テレビ)へのテレビ番組供給、企業内映像伝送などに使われています。さらに1992年からは通信衛星(CS)で個人向けの有料テレビ放送も始まりました。一方、放送衛星(BS)としては「BS-3(ゆり3号)」が使われています。
通信衛星や放送衛星には中継器(トランスポンダ)が搭載されています。地上(地球局)からの電波を衛星のアンテナで受け、トランスポンダで増幅して地上の目的地に向けて送り返します。1機の通信衛星に搭載するトランスポンダの数が多いほど、回線容量が大きくなります。トランスポンダの総数は、N-STARが52個、スーパーバードが52個、JCSATが104個もあります。
最初の商用通信衛星ア−リ−バ−ド(インテルサットI号)は、重さ39kgで電話240回線分の容量でした。最近では、重さ2トン級の衛星が打ち上げられるようになり、数万回戦が可能です。
地球局と衛星とを結ぶ電波の周波数帯は、6G/4GHz(Cバンド)、14G/11G、12GHz(Kuバンド)、30G/20GHz(Kaバンド)が主に使われています。ここで例えば6G/4GHzとは、地球局から衛星へ(アップリンク)6GHz帯、衛星から地球局へ(ダウンリンク)4GHz帯を使うという意味です。周波数は、1.アップリンクは地球局からは大電力で送信ができるため電波の減衰の大きい高い周波数帯を使う、2.ダウンリンクは衛星の送信電力に制約があるため減衰の少ない低い方の周波数帯を使う、という使い分けです。
ここで、衛星通信の特徴をまとめると次のようになります。
IS03R.GIF 衛星から地上に向けて発射される電波は、広いサービス・エリアに降り注ぐので、広域をカバーできる(広域性)。
IS03R.GIF 同様に、エリア内の多数の地球局が同時に受信したり、多地点からの情報を集めやすい。(同報性、マルチアクセス性)
IS03R.GIF 地球局を移動させれば、どこからでも自由に短時間に回線を設定できる(回線設定の迅速性・柔軟性)
IS03R.GIF 1個の衛星がカバーできる範囲では、地上の距離に関係なく、伝送コストは一定である。このため遠距離通信では経済的となる。

その反面、次のような問題点もあります。
IS03B.GIF ”地上ー静止衛星ー地上”の延べ回線長が7万km以上になり、電波の伝搬時間だけで0.24秒かかる。このため電話などではどうしても通信中に間があいてしまう。
IS03B.GIF サービス・エリア内の誰もが受信できるので、通信の秘密を保つためにはどうしても信号の暗号化が不可欠となる。
図1 日本をめぐる通信衛星と放送衛星 N-STAR、スーパーバード、BS-3は各2機ずつ、JCSATは3機、インテルサットは大平洋上、インド洋上、大西洋上に合計29機。インマルサットは8機が運用されている。
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