5−1.プレゼンスに国境はない



 インターネットは、国境を越えて全世界のプロバイダと相互に接続できるのが重要な前提の1つになっている。これは社会的な要請もあるが、現状では国境を設けることが技術的見地からも大きな損失になるからである。その理由の1つは、DNSの管理方式にある。

 現在インターネットに接続されている全てのホストは、DNSを利用できる環境になければばらないという技術的前提がある。このDNSは全世界で統一されて運用されていることが前提になっている。全てのインターネット参加ドメインは、どこかでDNSサーバを少なくとも1つは稼働させなければならない。そして、これらのDNSサーバは、ドメイン名の階層で一段上位のサーバに登録される必要がある。これらの情報は、最終的にはルートサーバと呼ばれるいくつかのサーバの集団に登録される。つまり、現在の国別ドメイン(日本なら.jp)や、組織属性別ドメイン(.comなど)は、全て最終的にはルートサーバに登録されている必要がある。このように登録しておくことによって、全てのDNSサーバはルートサーバからたどりつくことができるようになる。各ドメインのDNSサーバにはルートサーバの場所をあらかじめ登録しておくことで、全てのDNSサーバが相互に参照できるようになっている。

 DNSサーバはインターネットのどこに置いても相互にアクセス可能だという前提に立つと、「特定のドメインのDNSサーバは、そのドメインを管理している主体のネットワークに必ずしも置く必要はない」ということがいえる。ある国別ドメインに属するドメインの実体が、その国の中に存在する必要はないのである。

 また、IPネットワークの構成とドメイン名の階層構造は、DNSサーバを利用すればお互いにまったく独立に構成できるようになっている。このことは、1つのドメインを構成するホストが、複数のIPネットワークに分散していてもかまわないことを意味している。

 以上の事実を総合すると、次のことがいえる。インターネットのプレゼンスをサービスとして提供するには、インターネットに接続されているだけでよいということである。つまり、国境や地理的条件による制約は、十分大きなバンド幅と短い反応時間で通信ができるという仮定さえ成立していれば、まったく存在しないということがいえる。